研究紹介
神経機能画像と神経疾患
神経画像検査はCT, MRIなど広く臨床的に用いられており、神経内科では欠かすことのできない検査です。脳の「かたち」をみることで病気の診断をする画像診断が主ですが、神経画像検査には「かたち」ではなく「はたらき」を調べる方法もあります。その代表的なものが機能的MRIです。
機能的MRIは血液成分であるヘモグロビンの酸化状態によって磁気共鳴信号が変化する性質を応用して脳活動を検出する方法です。この技術により神経科学研究には近年目覚ましい進歩があり、私たちの脳機能に対する理解は格段に深まりましたが、臨床分野への応用研究はまだまだ発展途上です。特に脳梗塞や神経変性疾患でみられる高次脳機能障害の病態は未知の点も多く、薬やリハビリが脳にどのように作用して効果を発揮するかもまだ解明されていないことがたくさんあります。認知症やパーキンソン病の患者さんに治療薬を服用してもらった後でMRI装置の中でいろいろな認知課題を行ってもらい、その時の脳活動を測定することにより治療薬が脳のはたらきにどんな影響を及ぼしているかを調べるなど、私たちは機能画像を臨床分野に応用した研究を行っています(図1)。
機能的MRIのほかに脳活動を観察する方法としてPETがあります。PETは陽電子(ポジトロン)検出を利用した断層撮影技術で脳の活動・代謝状態を定量的に観察することができます。当施設ではMRIとPETを同時測定することが可能な撮像装置が稼働しています(図2)。これは2016年現在本邦でまだ2台しか導入されていない装置で、これを活用して神経疾患の診断や病態の解明が進むことが期待されています。当科ではこのPET-MRIをさらに経頭蓋磁気刺激法や脳波測定と組み合わせることにより脳の情報処理の秘密を解き明かすために様々な実験を行っています。