研究内容
臨床から明るい医療の未来を目指して
当科の研究のご紹介します。
臨床研究
当科では臨床に基づいたテーマの研究を積極的に行っております。患者さんの日々の診療から得られる知見を基に病気の解決を目指すものであり、医療の原点であるとともに大学病院の使命と考えています。
現在、筋萎縮性側索硬化症をはじめとする神経変性疾患、さまざまな末梢神経障害(ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、血管炎症候群など)、重症筋無力症などの自己免疫疾患などに対して電気生理学的検査を中心とした精査を行い、得られたデータを解析して病態の評価を行っております。これらのデータはすべて当科で長期間管理、蓄積し、データベース構築を目指しております。
将来的には蓄積されたデータを順次論文化し、研究の発展と病態の解明を目指します。
大学院での研究
現在当科に所属している大学院生が行っている研究は以下の通りです。
① オキシトシンと(Oxt)と糖代謝に関する研究
Oxt KOマウスを用いて、Oxtがインスリン分泌にどのように関連しているか、また、膵島内でGLP-1の発現にOxtが関与している可能性について研究をしています。
糖代謝は ・パーキンソン病などの変性疾患のエネルギー代謝や病理形成 ・動脈硬化などによる脳血管障害 ・糖尿病による末梢神経障害 などに深いかかわりがあると言われており、今後の臨床応用を目指した研究です。
② 神経核内封入体病におけるp62タンパク質陽性封入体の性状解析
神経核内封入体病(NIID)は高次機能障害、パーキンソニズム、自律神経障害などの多様な症状を呈する神経変性疾患で細胞の核内にユビキチンやp62タンパク質陽性の封入体がみられます。本症の原因はNOTCH2NLC 遺伝子上のGGCリピート配列の延長であることが分かっていますが病態が依然不明であり治療法もないことが大きな課題です。前述の通り本症の封入体にはp62タンパクが含まれており、これまでの研究から細胞質で形成されるp62タンパク質陽性封入体の役割や形成機序が理解され始めていますが、NIIDのように核内でみられる封入体の性状や病態への寄与は不明です。NIIDの病態解明の糸口を探るため本症の患者さんから採取した皮膚をもちいて免疫組織蛍光法を行い、p62タンパク質陽性封入体の細胞質と核における局在様式、成分、および核膜との関係性について調べる研究を行っており、今後は電子顕微鏡による解析も進める予定です。
他大学との共同研究
「パーキンソン病およびパーキンソン症候群における先進的拡散MRI画像と臨床像の関連の検討」というテーマの研究を順天堂大学脳神経内科と共同で行っております。
パーキンソン病ではMRI画像で異常を認めないことが重要であるとされていますが、本疾患の主病変である黒質緻密部に焦点を当てた解析を行うことで異常を検出できることや、大脳白質においても先進的拡散MRIを評価することで広汎な変化を認めることが知られています。先進的MRIの技術を用いてパーキンソン病およびパーキンソン症候群の非運動症状を中心とした各種臨床症状を評価し、画像との関連を解析することを目的としています。
当科は2018年に現体制となり、研究活動は徐々に規模を拡大しております。上記の研究は特定の研究員が行っているのではなく、医局スタッフ、大学院生、診療医といった医局員全員が研究に関っています。全員の協力体制のもと、明るい医療の未来を目指して日々努力しております。
