福島県医科大学医学部 脳神経内科学講座

福島県立医科大学 脳神経内科の臨床についてご紹介します

福島県立医科大学 脳神経内科では、脳、脊髄、末梢神経、神経筋接合部、骨格筋などに起きる病気を幅広く診療しています。受診される患者さんの症状は本当に様々です。頭痛、けいれん、めまい、しゃべりづらい、麻痺、しびれ、ふるえ、歩行障害、物忘れなど、多岐にわたります。

一般のクリニックや病院で原因がはっきりしない、あるいは、治療の難しい患者さんが、主に福島県内各地から紹介され、当科を受診されています。外来診療は脳神経外科とともに脳疾患センターでおこなっています。入院病床はきぼう棟7階東にあり、49床です。具体的に、2023年1月から12月の1年間にわたる診療の概要について以下に説明します。1年間の入院患者数は281人、外来患者数は9012人でした。入院患者の内訳(図1)と検査件数(図2)を示します。大学の附属病院ですが、脳血管障害などの急性期の病気もふくめ診療している特徴があります。

脳神経内科領域における最近の治療の注目話題を三つほどご紹介します。

1片頭痛の治療

片頭痛はズキン、ズキンと拍動するような頭痛であり、 20歳から 40 歳の働き盛りの女性に多くみられます。市販の薬で対処できることもありますが、程度が強かったり、頻度が多かったりすると、日常生活や仕事に支障をきたします。ただし、周囲からなかなかそのつらさを理解されず、がまんしている場合があります。このつらさが日常化すると、本当はつらい自分にきづかないことがあります。最近、片頭痛の予防薬として、抗CGRP製剤、抗CGRP受容体製剤という月1回の皮下注製剤ができました。この治療の導入後、片頭痛の程度と頻度が相当に軽減し、長年の頭痛から解放される方がいます。われわれもこの治療が始まってから、想像していたより効果があり、喜ばれる患者さんが多いことを実感しています。多くの患者さんに知ってほしい治療です。

2アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制に対するレカネマブによる治療

アルツハイマー病はもっとも多い認知症であり、病因には脳内へのアミロイドβ(Aβ)の沈着があります。レカネマブは可溶性Aβ凝集体(プロトフィブリル)、Aβプラークの主な構成成分である不溶性アミロイドβ凝集体(フィブリル)にも結合し、脳内のAβプラークを減少させます。この作用により、アルツハイマー病の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることが実証されています。外来で治療し、1時間の点滴治療を2週間ごとに行います。販売後の早期からこの治療を導入しています。

3神経免疫疾患に対する新しい治療

神経免疫疾患は体内の免疫機能の異常により、脳、脊髄、末梢神経、神経筋接合部、骨格筋などにおきる病気です。代表的な脳、脊髄の病気として多発性硬化症、視神経脊髄炎スペクトラム疾患、そして、神経筋接合部の病気として重症筋無力症があります。この数年で急速に治療が進歩し、新しい分子標的薬がでてきています。分子標的薬は、病気の原因となっているタンパク質などの特定の分子にのみ作用するように設計された薬です。分子標的薬により免疫系の一部に選択的に作用し、しっかりとした効果を示し、これまで主体であったステロイド薬の減量、中止が可能になりつつあります。図3にはここ数年で可能なった治療薬を示しました。近年の治療の進歩が一目瞭然と思います。

以上、脳神経内科では、片頭痛のような多くの方が悩む病気、神経免疫疾患のような稀な病気、そして認知症のような高齢化社会において喫緊の課題である病気に対する治療を積極的に行っている福島県の代表的医療機関です。皆さまの期待にこたえられるように尽力してまいりますので、よろしくお願い致します。